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2002年3月 第20話  鰹節へのこだわり

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一口に「鰹節」と言っても、実際の所、その種類は、魚の種類、大きさ、製造方法や工程によって千差万別の鰹節に広がり、味や出汁の効果である「塩なれ」の力も一つ一つ全く異なったものとなります。日本農業規格では、「本鰹」だけでなく「宗田鰹」も鰹節と表示されますし、その他にも「雑節」と呼ばれる「鯖節」「鰺節」「鰯節」も鰹節と思われております。

我々蕎麦店にとって、非常に大切な材料となる鰹節の選択基準は、その店がどのような蕎麦汁を作るのかという事に帰結いたしますが、要は、「魚の種類」と「カビ付けの状態」が二大要素となります。

非常に簡単になりますが、「鰹節」は魚を三枚に下ろし、お湯で身が崩れぬように丁寧に煮熟し、天日干し後に「燻し、乾燥」を行い、形を整えた上で「カビ付け」をするという工程を経て作られます。「カビ付け」は繰り返し行われ、

その回数によって、「荒節」から2回以上が「枯節」。6回以上が「本枯節」。と呼ばれる鰹節となります。1回のカビ付けで、約2から3週間の工程を要し、根気と経験が必要とされるこの作業の効果は、蕎麦汁作りに欠くことのできない「出汁の力」を生むものです。
繰りかえし付けられたカビによって、

① 十分な乾燥 

②魚の脂肪の持つ臭みやアクの除去

③ 脂肪・蛋白質分解に伴う、うま味の増強
④ 芳香を生み、有害菌を殺し保存に耐える・・等の有益な効果を作り出します。
「荒節」と「枯節」に違いであるカビ付けによる品質変化は、脂肪分解によるうま味の増強ですが、あまり脂肪が多すぎても、アクが出て出汁が濁ると言ったことが起きるため、鰹節の原料には、脂の乗りきった旬の鰹より、早めの太らない鰹を好んで使用いたします。
さらに、この鰹節は削って使う訳ですが、当店では以前より0.5㎜に厚さを定めております。この厚さが当店の火加減、煮詰め時間によって「最も力のある」出汁を生む厚さであるようです。鰹節は0.2㎜を境に薄削りと厚削りに分かれますが、厚削りを使用するのは、現在蕎麦店ぐらいでしょうし、0.5㎜以上となると老舗の蕎麦店以外には無いと断言できます。江戸以来、東京の老舗蕎麦店の使用する「鰹節」は、「本鰹の本枯節」・「枯宗田節」・「枯鯖節」の3種類と言うのが定説となっております。
それぞれ単独で使ったり、ブレンドして使用したりしますが、「本枯節」・「枯宗田節」は、もり蕎麦等のつけ汁用のメインに、「枯鯖節」は、かけ蕎麦等の種物用にブレンドしてに使われるのが正統と申せます。