2005年1月 第54話 情報開示
政治も行政も経済界も「情報開示」が求められて久しい昨今です。
スーパーマーケットにおいても生産地はもちろんの事生産者の明示まで進む時代がもうそこまでやって来ています。そば業界にしてもこの波は当然の事ながら受けるべきだと考えております。美味しいお蕎麦を安心してお食べ頂くためには、その店の情報開示が何より必要な時代ではないでしょうか?
そば粉の問題に目を向けると、国内生産量は約2万トンで全使用量約12万トンの20%にしかなりません。
どうひいき目に見ても全蕎麦店の2割しか国産そば粉を使えないにもかかわらず、
立ち食い店やフランチャイズチェーン店までが国産使用と言うような顔を平気でしています。
蕎麦専門店でも、価格的なこと技術的なことを考え、一部しか使えないのが現状なのです。
取り立てて大声を出すことではないかもしれませんが、おかしなお話です。
さらに、その製粉方法の開示もされておりません。
製粉方法は少量「石臼製粉」と大量「機会ロール製粉」がありますが、この違いによって雲泥の品質の差と、驚くほどの価格差(約3倍)が生まれます。この点も皆さんそ知らぬ顔といった状況です。
以前「新そばを掲示する時期」でその店の使用する産地が分かると言うお話をあえて致しましたが、
そば粉の産地が分かれば自然と製粉の方法も、製麺の方法も推測できるのです。
国内産は決して大量機械ロール製粉は致しませんし、反対に外国産は石臼製粉のようなコストのかかる製粉はせず、その結果製麺においても手打ちに適した良質の粉にはならないのです。
価格的にも「もりそば」1枚500円以下ではどう考えても国産石臼製粉は不可能だと思われます。
生産地明示のない牛肉をお買いにならないのと同様に、お蕎麦も中身を知っていただいた上でお食べになることをお勧めいたします。その上でお客様の評価を受けるのが時代の必然のような気が致します。
そば通のお客様には言わずもがなですが、そば専門店の蕎麦と、乾麺・コンビニ等の生めん・立ち食い、チェーン店のお蕎麦は似て非なるものだと断言できます。
老舗蕎麦店では伝統にのっとった技術で蕎麦を作り続けていくことは言うまでもありませんが、その差を時代の子ども達に伝え、本物と亜流の違いをはっきり認識させておくことが日本人らしい食文化の継承と思われます。作り手の我々とお客様方の共同作業が将来への分岐点ではないでしょうか?
食品に限らず色々な分野で本物とそうでない物のボーダレスが進む中、情報開示と本物を見極める目は、古今東西を問わず必要不可欠と思われてなりません。
我々の業界でも家庭や親子の間でも、
まさに「口伝」による申し送りが見直される時代がそこまで来ていると感じます。
当たり前のように行ってきた事がそうでなくなることを危惧し、敢えて自戒を含めて申し述べる次第です。
紙面の都合上詳しくは下記HPにて蕎麦・汁のご案内をご覧ください。