2005年11月 第64話 蕎麦屋の符丁(通し言葉)
お客様の注文を調理場に伝えることを「通す」注文品のことを「出し物」「通し物」と言います。
通し言葉は、江戸っ子の機知から生み出された、解りやすい符丁で独特の用語が使われます。
皆様方のご注文を通す声が聞こえてきませんでしょうか。
覚えるまでには少々時間がかかるやも知れませんが、慣れて参りますと、一つ一つ通すよりも早くて便利になってくるものです。
「つく」
1個のことを指す言葉。「天つき3杯のかけ」は、天麩羅そば1杯にかけそば2杯の意味。
「つき」の後の杯数が注文の総数、後からいわれる出し物の数は注文の総数から「1」をひいて数えます。
「まじり」
2個の意味。「ざるまじり7枚もり」は、ざるが2枚にもり5枚のことを指します。
ちなみに枚はせいろを数える単位、杯は種物を数える単位です。
「かち」
2種類以上の出し物が5個以上の奇数で注文されたときに使います。 多い方の出し物を先にして「かち」を付けます。「鴨が勝って7杯のおかめ」は、鴨南蛮が4杯におかめが3杯となります。 総数が偶数の場合は「と」が使われます。「鴨とおかめで8杯」は、それぞれ4杯ずつの意味です。
「さくら」
そばの量を普通より少な目に盛って出すことを言います。 「もりお代わり、台はさくらで」と言えば2枚目は量を加減して盛ること。台とは蕎麦・うどんの様な出し物の本体の事。
「きん」
「さくら」とは反対の意味の通し言葉で蕎麦の量を少し増やして盛ることを言います。
「おか」
岡に上がるから連想されるように、種物の具をそばやうどんの上にのせないで、別の入れ物に盛って出すこと。「岡で天ぷら」と通されると天麩羅は独立した注文品として別盛りされます。
「お声がかり」
複数のご注文の中であとに出すものを指す。
「板わさに天せいろ、天せいろはお声がかりで」は、板わさを先に出し、それが食べ終わった頃を見計らって天せいろを出すという意味。
「かんばん」
通し言葉ではありませんが閉店時間を告げる言葉。
と言うことで今号は「かんばん」本年も宜しくお願い致します。