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2005年3月 第56話  石臼へのこだわり

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昨年7月より自家製粉をスタートといたしましたが、お蔭様でお客様方にはご好評を賜っております。
軌道に乗ってまいりました製粉という事で、今回はそば粉の挽き方、言い換えればそば粉へのこだわりのお話です。

先日お客様から「そば粉は石臼で挽くの?」と尋ねられました。

「はい、うちでは全て石臼挽きです。」とお答えしましたが、業界全体では石臼挽きの粉を使用している店は2割程度となってしまいました。国産蕎麦の使用率も全体の2割であり、国産は石臼、輸入物は機械ロール挽きと言う住み分け選別が必然的に行われております。

2つに挽き方は、手間・効率・コストにおいて雲泥の開きがあるのです。その結果、原料の優劣以上の美味しさの差が生まれてしまいます。輸入蕎麦も石臼で挽けばいいのにと思いますが、コストがかかって販売価格と合わないと言うのが本音ではないでしょうか。
では石臼挽きの利点は何なのでしょう、そこが私どものこだわりの最重要点となります。

そば粉は熱に大変敏感で、製粉時に高熱が発生すると著しく風味を損ないます。
一分間に10~20回転の石臼に比べ100倍近くの高速で粉砕する機械ロール挽きは、瞬間的にソバとの接点に高熱を発生させてしまい、そばにとって最も大切な香りを飛ばしてしまいます。

石臼もある程度の摩擦熱は発生しますが臼の溝の切り方、目立ての調製、原料の投入量、回転数の慎重な管理で、害になる熱の発生を極力抑えて製粉できるのです。これが豊かな香りを持つ粉の基本と考えております。さらにロール挽きが円の接点で挽くのに対し、石臼は面と面ですりあわせて挽くために粉の粒子の角がとれて丸くなり、蕎麦打ちの大切な行程である練りにも良い効果をもたらします。
熱が出ないために水分の蒸発も少なく、しっとりした感じが石臼挽きの粉には感じられ、独特のこし、食感を味わっていただけると確信しております。

美味しいお蕎麦の為のこだわりは、人によっても多種多様であります。
良い香り、豊富な水分量をもったソバの実が理想ですが、これは農家の皆さんにお願いするしか有りません。 私どもは、ソバの実が持つ香り、水分をそのまま生かすことにこだわりを持ち、石臼挽きに固執する次第です。余談ですが、試験的に良質の外国産を石臼で挽くと国産と優劣がつきにくい蕎麦粉ができあがります。コストも手間もかかる石臼ですが、その効用・価値は十分にこだわりに値するものと感じております。
皆様は如何なものでしょうか。