2006年2月 第67話 蕎麦の色と味
毎年北海道では雪解けを待って蕎麦を蒔き始める時期となりました。
8月末にとり入れられる新蕎麦は独特の薄緑色をしておりますが、今回は「蕎麦の色と味」についてお話ししましょう。
ソバの実は外側から「外皮」「甘皮」「胚乳」「胚芽」によって形成されています。
そば粉はまず外皮を取り去り、抜きと呼ばれる実にして挽き、ふるいを通して製品になりますが、
この外皮の取り方、臼での挽き方、ふるいでの選別が色・味を決定する要素となります。
従ってこの3つの方法によって様々な蕎麦が生み出されると言うことになります。
ソバの実の内部は白色の粉となるが、外皮は黒、甘皮は薄緑です。
甘皮は蕎麦の味・香りの主成分ですが、外皮は「そば殻枕」に使われるあれで食用ではありません。
本来そば粉は外皮を取り去った上で挽かれるべきであるが、これがなかなか技術を必要とします。
田舎の蕎麦が黒く短いのはこの外皮を完全に取り去れないからで、
間違った常識として伝わっているそば粉の割合とは無関係なのです。もともと白いそば粉から黒い蕎麦は出来るはずもなく、ソバの実や挽いた粉を見れば一目瞭然でご理解いただけます。
と言った訳で、しっかりした方法と技術で挽いたそば粉で作った蕎麦は、新しい実の場合は薄緑色となります。 更科そばのように、実の中心部に近い胚乳部分だけを使うと薄緑の甘皮も無い訳で、純白の蕎麦になります。
取り入れから2,3ヶ月は薄緑色の状態を保てるようで、これを新蕎麦と呼んでいます。
取り入れから日数が経過すると酸化により薄茶、飴色の蕎麦となります。
ところがこの経年変化による色変わりは、石臼の回し方やふるい分けの工夫で防ぐこともできます。
簡単に説明いたしますと、色落ちのほとんどは外気に触れる甘皮部分ですので、ふるいによってその量を調節することで緑色を強調する事も、飴色を出すことも可能な訳です。しかしこの甘皮が、蕎麦の良い香りをだし、味を高める部分ですので、色に固執し色変わりした甘皮を取り過ぎると、蕎麦らしさは減少してしまいます。
その年の蕎麦の特性を知った上で、どんなお蕎麦を作りたいかを決めて製粉することが肝要であると思います。 色だけでも、味だけでも駄目なわけで、バランスがポイントである事は言うまでもありません。
味をそのままに、通年緑色を保つ手段としてクロレラを添加するところもありますが、個人的には新蕎麦の緑色とは似て非なる物という気がしております。