2006年3月 第68話 蕎麦粉の見分け方
昨今の蕎麦ブームから、ご家庭で蕎麦を打つ方が増えているように思います。しかし「どうしても繋がらない、上手くできない」とおっしゃって、蕎麦粉を分けて欲しいと言う方が多くなりました。
「どんな粉でお作りになったのですか?」とお聞きすると
「田舎からもらってきた」「デパートで買った」というお答えが返って参ります。
それではさもありなんと思います。
我々蕎麦店は、蕎麦を打つ技術はもちろんですが、蕎麦粉を選ぶ目も大切な技術と教えられています。
良質の蕎麦粉が選べないと、美味しいお蕎麦は打てないのです。
それではどんな蕎麦粉を選ぶのかというのが今回のテーマです。
私の経験から申しますと、蕎麦粉を選ぶ際には3つの欠くことが出来ないポイントがございます。
「香り」「水分含有量」「挽き方と篩」がその3点です。
それではこのポイントをどのように見分けるかと申しますと、「そばがき」にしてみるのが一番良く蕎麦粉の質を知ることが出来るように思えます。そば粉の挽き方の荒い、細かいは一目瞭然ですし、香りの有る無しもそばがきにしたときが最もはっきり致します。
蕎麦の香りが豊かで、ふわーっと膨らむような蕎麦粉がごく良質と言えます。
粉を見ただけでは解らないソバの実の皮が混じった黒い斑点もすぐ解ります。
もっとも黒いお蕎麦の方が上うまいという方もありますから、一概にこれを悪い蕎麦粉とは申しませんが、
蕎麦粉の芯は白いものですので、白い蕎麦粉の方が良質であると言ってよろしいかと思います。
もう一点の「水分」についてですが、日常はこの方法で蕎麦粉の良し悪しを確かめます。
その方法は、蕎麦粉を手で軽くつかむという簡単な方法です。
良質の蕎麦粉は挽きたてをつかむと「キューッ」と泣くような音を立てます。
そして崩れずに指の形を残したままで固まります。 乾いてそば切りに適さない粉はさらさらと崩れます。
不思議なことに古くなった粉も、手でつかむと同じように音を立てますが、こちらは香りが全然ありませんのですぐに識別がつきます。
前述のご家庭で繋がらない蕎麦粉はほとんどこの乾いた粉だと思います。
話のついでに、うどん粉の識別もお話ししますと、これは指先をぬらして粉を指先で練るようにすると解ります。 粘るような粉は良質、さらっとしたものは天ぷらの衣に適します。
以上は私自身の経験や先代からの口伝で、科学的識別法ではありません。
しかしこれらの方法で蕎麦粉の選別を間違うことはまず有りません。