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2007年12月 第89話  蕎麦の銘柄

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今年も北海道から新そばの出荷が始まる季節がやってまいりました。
各地からの特徴のある新そばはそれぞれ品種と銘柄が異なります。
今年も北から南へと数々の品種をお出しいたしますので、乞うご期待のほどを。
といった訳で今月は「ソバの銘柄」のお話と相成ります。

「カベルネソービニオン」・「メルロー」・「シャルドネ」・「ピノノアール」とワインにも葡萄の種類によって銘柄が生まれるように、お蕎麦にも品種によって銘柄がございます。

国内産&外国産と言う大まかな区別をされている方がほとんどだとは思いますが、
国内産だけ見ても土地土地の固有の在来種を含めると50以上の品種が現在日本国内にございます。

味や香りはもとより、収量の優劣や風土に合った改良が加えられて数々の品種が全国で作られております。 私どもと致しましては、それぞれの風味を吟味した上で、当店のそば汁に合う銘柄を探し、蕎麦を打ち上げております。さらに各地の銘柄の違いも楽しんで頂きたいと、産地表示をした国内各地の蕎麦を生粉打ちとしてもお出ししております。蕎麦を打ちながら、一口に蕎麦といっても各種各様、重厚な風味・穏やかな風味・野性的な味・洗練された香りと産地、銘柄によって色々なお蕎麦が出来上がり、驚きと楽しさを味あわせて頂ける事は蕎麦屋冥利と申せます。

私どもの二八蕎麦は主に北海道産の「キタワセ種 」と「ぼたん種」を使用しております。
「キタワセ」は富良野産の「ぼたん種」から選抜固定された新品種で、北海1号と言う名称で平成元年に農林水産省に登録されました。 風の強い所でも耐えられる短い丈のソバです。
「ぼたん種」は大正末期に道内紋別地方の在来種から選別した品種で、キタワセ以前の北海道産の主力です。 長年の栽培の間に交雑が進み、この品種本来の風味が薄れたため、一時期生産が殆ど無くなっていましたが、2000年頃より再度改良に成功し過去の名声を取り戻しつつあります。

ソバは他花受粉の為交雑しやすい植物ではありますが、最近では品種を守ろうと隣接する地域では同じ種を播くと言った地方も出てきています。生粉打ち蕎麦で使う「福井県産在来種」がその銘柄ですし、
同じく生粉打ちでお出ししている「長崎県対馬在来種」は島と言う地理的要因で交雑がなく、古来大陸から渡ってきたソバの原種が現在まで継続している貴重な銘柄と言えます。

以下に代表的な国産品種をご紹介いたします。
「常陸秋そば」昭和62年茨城金砂郷の選抜登録。
「信濃1号」昭和19年福島在来種からの選抜。
「階上ワセ」大正7年青森階上在来種からの選抜「宮崎大粒」昭和54年宮崎在来種の4倍体新種
「九州秋そば」鹿児島鹿屋在来種など秋播きの総称
「信州大そば」信濃1号の4倍体、新品種
「いや在来」徳島県祖谷(いや)地方の在来種
各地の特徴のあるソバが、変わらずに続く事を祈るばかりです。