2010年8月 第98話 インスタント
コーヒー・ラーメン・スープ・味噌汁・白米まで至る所にインスタントと呼ばれる商品が存在いたします。
そもそも「簡便性」「経済性」言葉を変えれば「いつでも簡単に、無駄なく」をコンセプトに生まれてきた商品ではありますが、本物感を追求し製法技術の進化が成されてきました。
お蕎麦の世界でも「乾麺」や「パック麺」がそのインスタント商品の部類かと思います。
驚いた事にお蕎麦の世界のインスタント化は素麺に代表されるように、大昔から綿々と受け継がれてきた歴史があります。近代的な瞬間凍結と言う製法ではなく、自然乾燥を使った保存の意味合いが強いものなれど、簡便で無駄なくと言うコンセプトには当てはまる素晴らしい発明であるように思います。
我々蕎麦店でも「店の味をご家庭でも」と乾麺の開発を行う店がありますが、なかなか難しいのが現実です。お蕎麦に関しては同じものをお届けするのは不可能だと言う思いです。
お蕎麦に関しては「乾麺」は形状こそ同じにはなるもののまったくの別物といった方が正解かもしれませんし、半生めんやパック麺は日持ちを重視してアルコール・塩が使われ全く味が変わります。
商品を「蕎麦」と呼べる規格は蕎麦粉30%からとなっており、乾麺パック麺の類は多くても50%程度です。
それ以上蕎麦粉を増やしても製法上・価格上意味が無いと思います。
小麦粉と違い蕎麦粉は劣化・変化が大きく乾燥や凍結で本来の風味を保つ事に適していないため、
どうしても本物感に乏しいか、形状を維持するために蕎麦粉の分量が減ることになるのでしょう。
ところが本来のインスタントという簡便性を追求するならば、蕎麦粉はこれ以上ない性質を持っています。
熱を加えずとも消化に優れている蕎麦粉は生のままでも食せます。粉のまま・実のままであれば保存も容易です。 戦国時代の武士は野戦などの食料として蕎麦を持ち歩いていたと聞きますからそれが立証されています。
粉であれば「そばがき」にも「麺」にもなりますし、まさしく本物そのままです。以前どこかの食品会社で「Cook Do」なる商品を見かけましたが、美味しいものはひと手間が大切なのでしょう。ちょっと手を加えることで随分と美味しくなるようです。
お蕎麦は専門店でお食べ頂くのが一番だと確信しておりますが、乾麺も大きな鍋で茹でたり、火を止めちょっと蒸らしたり、氷水で洗う事によって随分変わります。お試しあれ。