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2014年3月 第122話 驚きの蕎麦

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先日新橋を歩いていて「驚きのそば」を発見しました。
その名は「真っ黒なそば」である。京都から出てこられた蕎麦屋さんのようである。
写真も飾られてあったので覗いて見ると、確かに真っ黒なそばであった。
真っ黒なそばというと「胡麻切りそば」や「イカ墨切り」などは確かに真っ黒になるのであるが、
これらの変わり蕎麦を除いては蕎麦は本来うす緑から薄茶のあめ色が本道です。

蕎麦屋に生まれて50年、毎日のようにそば粉を見るが黒いそば粉にはお目にかかったことは一度もない。
穀物の粉は白色系と相場が決まっているのであるが黒いそば粉とは驚きである。
きっと何かの理由があってあえて黒くしたはずではあろうが、今も変な悪習として残っている「黒いそば=田舎蕎麦=そば粉が多い」というイメージの為なのであろうか?

そばの歴史を辿ると粒食の時代を経て粉食の時代となり、粉を加工して麺になるわけであるが黒というイメージで浮かぶものはそばの実の皮だけである。皮は殻であり米のもみ殻と同様食用には適さない。それを粉にしても砂を噛むようなザラザラ感が残るはずであり、当然の如く粒子も揃わず田舎蕎麦がそうであるように食感に滑らかさは生まれないと思われる。


そば粉製粉の歴史は如何にこの食用に適さない黒い殻を上手に取り除くかという歴史であり、
その技術の発明が食べやすく美味しい蕎麦を生み出す原点になったと言われている。
殻を取り除いたそばの実を挽けば食感も香りも引き立ち、繋がりもいい長い麺を作ることが可能になります。この技術が江戸で発明・開花したことで、今に伝わる江戸のそば文化が生まれたといっても過言ではありません。そばは茹でてしまうので安心と言っても殻には雑菌が大量にあります。
製粉の際、そばの実100粒に2粒あればそばには殻の砕けた斑点が付きますし、100粒に5~10粒で田舎蕎麦のように黒い感じを出す事ができます。

前述のそばを食べてみますと、正に見事な程真っ黒でありますので100粒全部殻付きのまま挽いたのだろうと思われます。確かに面白いとは思いましたが、反面そば事情を知る者にとっては驚き、気味の悪い思いでありました。 全国にはまだまだ面白いお蕎麦があるものであります。
仕事柄色々食べさせていただきますが、やはり蕎麦は江戸流が何と言っても口に合います。
手前味噌かもしれませんが、江戸流の蕎麦が全国に散らばり評価を受けている事も事実であります。