2020年9月 第152話 江戸の年中行事:秋冬
1月から始めた江戸の年中行事のご紹介も最終の第三回目となりました。秋冬はビックイベントが続きます。
「9月」長月:火事と喧嘩は江戸の華と言われるが、もう一つ江戸っ子の心意気を示す「祭り」を忘れる訳にはいかない。江戸を代表する祭りと言えば将軍家が絡んだ2つの天下祭り「山王祭と神田祭」だろう。この神田祭が15日に山王祭(6月)と隔年で行われる。祭りと言えば当地芝神明にも江戸を代表する祭りがある。本年はコロナウイルスによって中止となってしまいましたが、芝大神宮の「だらだら祭り」がそのお祭り。
9/11~9/21までの長期間行うのでこんな名がつきました、別名「生姜祭り」当時周囲に生姜畑が多くあり祭りの奉納に供えられた生姜に因んで祭礼期間中の縁日には生姜市が立った様子が江戸名所図絵にも描かれております。当店でも9月の家伝変わり蕎麦は「生姜切り」を販売しております。薬効は諸厄が払われ風邪を引かないと言われています。
「10月」神無月(かんなづき):4月の衣替えと反対に10/1の衣替えは袷を綿入れへ。
江戸市民には季節に合わせて「単(ひとえ)」裏地の無い着物、「袷(あわせ)」裏地がある着物、「綿入れ」裏地と表地の間に綿を入れる着物の3種類が必要だったが、実際には衣替えの時に袷に綿を出し入れし仕立て直しをしていた。江戸庶民はリサイクル上手だったようだ。
「11月」霜月:江戸庶民の2大娯楽は歌舞伎と相撲だが、歌舞伎興行では1年のスタートを11/1と決めていた。1年を「顔見世・初春狂言・弥生狂言・皐月狂言・夏狂言・秋狂言」の6つに分けて興行した。なぜ中途半端な11月がスタートかは古代中国の正月が11月だった事からとされているが正月より2か月前にずらした方が売上が期待できるという説が有力、この風習は現在も継続中。11月最大の行事は酉の日に行われる「酉の市」だ。元々は農村と町人がそれぞれの品を持ち寄る交流の場であったが、やがて神社の祭礼と結びつき「武運長久を祈る祭り」に、平和が続く江戸中期には「開運招福・商売繁盛」の祭りと性格を変え盛大になっていった。鷲(おおとり)や大鳥を冠する神社で行われる。「三の酉がある年は火事が多い」は全くの迷信。買い求める熊手は「お多福.宝船.千両箱」と縁起物のオンパレードのデザイン。日本一の酉の市は浅草鷲神社なり。
「12月」師走は「歳の市とすす払いと年越し蕎麦」:当時正月用品を一般の店で売る事は無く「歳の市」で買うのが通例であり、しめ飾り/神棚/羽子板や凧、海老.鯛.昆布.餅と言った食料品、まな板や桶などの生活雑貨まで幅広い物が集められていた。当時の江戸人の精神構造は新年を迎えることに相当気合を入れていたことが市の隆盛からもうかがえる。主な市は深川八幡、浅草観音、神田明神、当地芝神明などである。
近年は歳の市と言えば「羽子板市」一色になってしまった。年末大掃除に当たる「すす払い」は12/13の特定日。この大掃除を済ませた14日から歳の市が各地で始まった。
さて1年の最後「大晦日」の行事はご存知「年越し蕎麦」と「除夜の鐘」と相成ります。運気を引き寄せ・寿命を延ばし・苦労厄災を切り捨て・金運も呼び込むという有難くも大盤振る舞いで縁起を食する習わし。手前味噌にはなりますが信じる者に栄え有りです。
営業は22:30までを予定しております。ぜひご来店の程心よりお待ち申しております。
コロナで踊らされた2020年の厄を払う『年越しそば』の後は、増上寺の「除夜の鐘」で新たな気持ちで新年を迎えて頂ければよろしいかと!