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2022年9月 第181話 つなぎ(小麦粉)の意味

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白っぽいそばはそば粉が小麦粉より少ないと言う「都市伝説」のような話がありますが、蕎麦産地の田舎で食べるお蕎麦が黒い事がその出所なのでしょう。しかしながら蕎麦粉は本来白い物なのです。
お酒の大吟醸(精米歩合50%以下)の様に蕎麦の実の中心部分25%程度しか取らない「更科そば」なら真っ白な蕎麦になりますがつなぎで白くなる訳でも、つなぎの小麦粉を加えるから長く繋がる物でも無いのです。
そば切りが生まれた時代には確かに蕎麦粉より小麦粉が余計に入っていた事が1751年に発刊された蕎麦全書にも「小麦粉4升に蕎麦粉1升の割合」と記述されていますが、これは当初そば切りが小麦粉で作ったうどんの代用品から始まった為と思われます。細く長くして食べるのは素麺やうどんと言った小麦製品であり、当時小麦粉より数段安価なそば粉を混ぜて増量し販売したと考えられます。現在この価格は大逆転で蕎麦粉は小麦粉の約5倍もする高値です。


さて話を戻して、当時の蕎麦粉は挽き方が荒かったり不純物である表皮の部分(この部分が蕎麦を黒くする原因)を取り切れなかったりで確かに繋ぎ難かった様ですが、本来の蕎麦粉はつなぎを入れずとも正しく丁寧な製粉をすれば水だけで繋がる粉です。繋げる原理には蕎麦の持つ蛋白質が水に溶けた時に出す「粘り」を使うのです。ところが一度はしっかり繋がる蕎麦粉もその蛋白質が水溶性の為、乾くと元に戻ってしまい「繋ぎ役」が居なくなって切れてしまうので水以外の繋ぎ役を入れるのです。つまりつなぎを入れないと繋がらないのではなく、時間が経つと繋がっていられないのです。
「繋ぐ力」と「繋ぎ止めておく力」の両方を備えている小麦粉が、「繋がる蕎麦粉」と「繋げる技術」を持ち合わせていない人によって使われた結果「蕎麦を長くする為には小麦粉をたくさんつなぎに入れなくては繋がらない」事になってしまったのです。小麦粉の力だけで繋がった蕎麦はおいしい物ではありません。蕎麦粉だけでも長くできる技術を持ってこそお蕎麦の美味しさが出せるものと確信しています。
その技術こそが「木鉢の技術」であり、それに使うそば粉を作る「抜きを取る(完全に脱皮した実を作る)」技術なのです。江戸時代に完成したこの二つの技が江戸蕎麦の隆盛の礎ですが、そこには「繋ぎ止めておくためのつなぎ」は入れますが「繋げるためのつなぎ」は使いません。先人達によって修練されたそのつなぎの割合が二八そばの原点だと言われています。つなぎには鶏卵や山芋も使われますが、発生の状況から見て小麦粉が一番自然と思われます。