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2024年7月 第188話「ご当地百話」

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今回は「愛宕神社」に関するお話です。
一年の半分を過ぎようとするこの時期、神道では年に二度のけがれを祓う大祓(おおばらい)の一つである茅の輪くぐりの「夏越の祓(はらえ)」が行われ、神社に集う人々を数々の露店商が迎えるのが古来よりの慣わしである。盛夏の風物と言えば「ほおずき市」であり、現代では浅草寺が有名であるが江戸時代には当地「芝の愛宕神社」を指すものであった事をご存知の方は相当の江戸通と言えます。
徳川家康の命で防火防災の神様を祀った愛宕神社は高台にあり海と市中が一望できる景勝地でもありました。さて「ほおずき市」の起源であるが、ほおずきの葉を煎じて飲むと癪の種(さしこみ)を切り、子供は虫の気が去ると言う夢を見たある武家屋敷の奉公人が、屋敷内に自生していたほおずきを飲んだところ癪が治ったという言い伝えによる物とされているそうだ。この言い伝えが六月末の「千日詣り」と新年から半年の厄を祓う「夏越の祓」と重なり縁起物としてほおずきが売られる様になったと言われている。
ご案内が遅れて申し訳なかったのですが、ちなみに現在も愛宕神社の千日詣りの功徳日(特別な日)は6月23・24日、浅草寺の千日詣りは7月9・10日となっていて、ほおずき市が立つ。この日に茅の輪をくぐり穢れを祓い,縁起物を買い,夏の訪れを感じる江戸庶民の姿は、今に伝わる粋な風物ではないかと思います。余談になりますが、愛宕神社のお話によると「羽子板市」も起源は同神社だと言う事です。神社に行くと面白い話がたくさん聞けます。
話のついでに「千日詣り」の逸話を一つ・・
元来その字の通り,千日詣りは特別な日に詣でる事で千日分のご利益を授かるとしたものであるが、ある時から浅草寺ではこの千日が46倍の四万六千日のご利益に変わりました。その訳についての説その1は一升枡に入れた米粒の数がほぼ四万六千粒で「一升」と「一生」をかけて一生無病息災に過ごせる数として46000になったと言うもの。その2は1日中と言う意味を四六時中とも言うがそれを1000倍すると四万六千になると言うものだそうで,江戸っ子らしい洒落の効いた逸話には思わず微笑んでしまう次第です。他にも幾つかの功徳日があるそうで,1/1・3/4・4/18・5/18は百日、6/18・10/19が四百日、1/7は何と六千日、12/19は四千日と言う記載があります。理由は色々あるのでしょうがご興味のある方はお調べ下さい。ともあれ江戸時代の観音様への信仰と庶民の願いが数々のイベント日を作った事は事実として残っています。