当店は寛政三年(1791年)、そば打ち上手として知られた信州の反物商・布屋萬吉が江戸行商の折、領主・保科兵部少輔の助言でそば屋に転向。
東日本橋の薬研堀に「信州更科蕎麦処」を開店、尾張町及び元数奇屋町にて営業しご当地芝大門では大正二年より商いをさせて頂いております。
徳川家の菩提所でございます増上寺の門前は江戸有数の盛り場であり、芝大神宮の境内は「め組の喧嘩」の舞台でもあります。この地で創業220余年を数え当代で7代目となりました。これもひとえに皆様のお陰と心より御礼申し上げます。名代「御前更科蕎麦」の古き伝統と、布屋萬吉の創業の心を守り一層の精進と工夫に努力する所存でございます。どうぞよろしくお引き立て頂き、ご叱咤のほど重ねてお願い申し上げます。
当店のおそばの最大の特徴はその製粉方法にあります。機械ローラーによる大量生産のそば粉や単なる石臼製粉とは一線を画した「人の手による石臼製粉」がその特徴で、それが最高の調和を持ったそばの風味や色を余すことなくお届けできる唯一の方法と自負しております。
人が石臼を回す速度を毎分12~14回転にすることで摩擦熱を極力抑え、そばの風味や水分を保つ事ができます。
さらに篩(ふるい)は6cm角に47個という細かいものを使い、約3%の雑味だけを取り除くことで、そばの実一粒一粒の持つ風味全てを取り出すことを実現しました。
当店のそば汁は、本醸造醤油、鰹節のだし汁、砂糖、本味醂と言う四種類の材料のみを使用した「濃厚な甘口」でございます。家伝の技術で醤油に砂糖を混ぜ込んだ「煮かえし」と呼ぶそば汁の原液を陶器のカメに入れ2週間以上寝かしたものに、厳選した土佐産の「枯れ宗田鰹節」と鹿児島産の「本枯れ鰹節」を1時間煮詰めて抽出した琥珀色の濃厚なだし汁を、「1:2.6の割合」で合わせたものが当店のそば汁で御座います。
そば汁は、醤油、鰹節のだし汁、砂糖、味醂のどれが入っているか分かってはいけません。どれが勝っても、どれが負けてもいけないというのが極意なのです。
当店のそば汁は、4種類の材料が調和を持って完全に混ざり合い、渾然一体となった深みのある味を醸し出すものと自負致しております。
主として北海道産のそば粉を使用して、そば粉8割、小麦粉2割のおそばです。
のどごしの良さと、そばの味、香りをお楽しみ頂けます。
全国のそば産地から厳選したそば粉を使用した、そば粉100%のおそばです。 収穫時期に合わせて北~南へ産地を移り、1年のほとんどを新そば(収穫後2ヵ月半までを言う)の状態でお届けします。
当店の名物。そばの実の中心に近い芯の部分だけを使用した透き通るような純白のおそばです。ほんのりとした甘みと、なめらかなのどごしです。
更科そばに季節の香りを打ち込んで旬の味をお届けします。
家伝として伝わる風味と職人の遊び心を、ご堪能頂きたいと思います。