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2007年11月 第88話  そうめんとにゅうめん

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「にゅうめん」は漢字で書くと「煮麺」です。「煮た素麺」ということになります。
現代では、素麺は氷水の中に泳がされている、夏の食べ物で、お中元の送り物であり、冬には食べるものではないと考えられがちですが、江戸時代には、四季を通じて食べられておりました。
そして、「夜そば売り」の商品であったのです。

「夜そば売り」というと、「蕎麦」ばかりで「夜なきうどん」は大阪の売りものであると考えがちですが、
京都でも「夜なき」というと蕎麦も売っております。川柳には、江戸での「夜なきうどん」は出てきません。
どうも、「夜そば売り」の中に、蕎麦、うどん、素麺、煮麺と、違った麺類を販売する振り分けがあったようですが、売り声が違うのです。素麺を売っている時には、「そゥーーめん」と甲高い声で売り歩きます。
煮麺は「にゆゥーめーん」と低い声でうなったと言う事です。

区別の曖昧な「冷麦」と「素麺」ですが、両方とも小麦粉製品です。「うどん」もそうです。
この分類は、「冷麦」と「うどん」が「切り麦」で違いは太さ、「素麺」は「ラーメン」のような「引っ張り伸ばし麺」で前の両者と製法が違います。自ずとその「組成」も違います。

冷麦やうどんは布状に広げて包丁で細く切りますから蕎麦と同じですが、素麺は紐状に細められた縄を引っ張って細くする、いわば「金太郎飴」のような麺ですので、金太郎さんの顔がそのままに細くなるように、練られた組織が縦に引っ張られてそのまま細くなりますから、うどんや冷麦のように剪断されず、堅く絞まっています。

素麺を伸ばす時は手に胡麻油をすり込み、麺が手に付かないようにします。すると麺線にも油が付着します。こうした素麺を製造直後に茹でる場合は、沸騰したお湯の中へ素麺を入れ、もう一度沸騰したところで、和紙を一枚、そのお湯の表面へかぶせ、浮いている油を吸い取ります。
そうしないと、素麺が油臭く仕上がります。真夏を一度越すと素麺の油は分解してもう油臭くありません。
これを「そうめんの厄が抜けた」と申します。乾麺類は皆、塩が利いていますから、お湯はたっぷり目にしないと、塩気が抜けません。その代わり長持ちし、カビさえ生えなければ、3・4年は賞味期限があり、「三年物」などは逆に貴重です。


素麺は江戸でも随分食べられました。
旦那寺へ「年会費」を納めにいった時や地主へ地代を支払いに行った時には、素麺が振る舞われることになっておりました。余談ですがお寺と素麺が付き物であったのは多くの川柳で伺われ、
僧正はもりそばのように食べる湯に浮かばせた素麺がお好みであったとの事です。