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2007年9月 第85話  お蕎麦は元気の素

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お蕎麦は江戸では「おやつ」ですが、農家では「ご馳走」でした。
「一・蕎麦、二・こたつ、三・そべり」と言う農家の言い伝えがありますが、 農家の生活では「蕎麦を食べ、こたつに入って、寝そべる」のが極楽だったという訳です。農家では作った米は年貢で取られ、食べることはまず無かったですし、麦もまれ、日常はアワかヒエ、これでは体力が付きません。
蕎麦がご馳走とされたのは美味しいばかりでなく、栄養価に富んでいたのが一番の理由だと思います。

動物の身体は蛋白質でできていますが、これを食べ物から摂取するために良質の蛋白質を持つ食品が不可欠となります。食品に含まれる蛋白質の量を「蛋白価」と言いますが、蕎麦は蛋白価が非常に高い食品です。一番高い鶏卵を100として蕎麦は90を数え,豚肉の82,大豆の80,米の72を大きく上回ると言われています。数が少ない物ほど量を取る必要が出てきますので,おかず無しで米だけ食べると一日7合が必要と言うことになります。ですから玉子・肉が貴重だった昔は「大めし食らい」が多かったのでしょう。
江戸の川柳では「大めし食らい」と言うと「信州人」を指すのが約束事だったそうですが、それだけ栄養価のある食品が周りに少なかったのかもしれません。その為に数少ない栄養食品として,そばの生産に力を入れたと想像できます。

一方,小麦の蛋白価は47と低く、お腹が張り裂けるまで食べても必要な蛋白質をそれだけでは補えません。 蕎麦が「もりそば」として食べられるのと比較して、小麦製品のうどんが,大豆を使った「キツネうどん」鶏卵を入れた「かき玉うどん」となるのは必然と言えます。小麦という欠陥食品を主食とした民族では、バター・チーズと色々な物を食べざるを得なかった訳で、米、そばと言った「主食」に頼った日本人より体格的に優れていく事にもつながる気がいたします。乳製品のお陰で大きくなった日本の近年の現状を考えても妥当な推測ではないでしょうか。

そばは余計な脂肪もなく高蛋白低カロリーだから力が付くのです。
ほとんどが身になり、その為小食でも大丈夫と言うことになります。
ちょっと極端かもしれませんが、「もりそば」に海苔をかけ、汁に玉子を落として食べ、食後に抹茶を飲めば、そばに無いビタミンA・Cも補え,栄養的には完璧です。ある栄養研究所が、60歳になる老人に3ヶ月間毎日、そばと少量の菜根と大根下ろしを食べさせ試験をしましたが、体重もほとんど減らず、一度風邪を引いただけで薬も飲まずに全快したそうです。人は少量の生野菜を副食として取れば蕎麦のみで生きられる事が明白になったと言われています。
これはちょっと極端な話ですね。これでは「食」の楽しみがありません。