2008年4月 第90話 風邪にはうどん!
暖かだった秋も終わり冬の訪れを感じるこの頃である。
そば粉ばかり誉めていてはと反省し今月は「小麦粉」を誉めようと思います、
なにせ蕎麦屋にとっては「うどん」も大切な商品ですから。
よく風邪をひいた時は「うどんを食べなさい」と言われるほど風邪に対して「うどん」は絶大な信用がございます。「医者殿はけっくうどんでひっかぶり」と言う川柳があるように、
お医者様でも薬を飲むより、結局はうどんを食べて布団とかぶって寝てしまうと言うくらいです。
薬事法がやかましくなる前の昭和初期までは、うどん屋で「うどん屋の風邪薬」を販売していたそうです。
この薬は白い粉のアスピリンだったそうですから、熱いうどんを食べアスピリンを飲んで温かくして寝れば、汗をかき熱も下がったろうと思います。風邪=うどんのイメージはこんなところから来ているとも言えます。
しかしながら、蕎麦が冷え、うどんが温まるのは科学的にも正しいものです。
先にもお話しいたしましたように、小麦粉は蛋白価が低いので、小麦に含まれる蛋白と結びつかない余ったアミノ酸が短時間に燃焼するのです。蕎麦の方は余ったアミノ酸が少ないので燃焼が起こりにくく温まらないと言えます。小麦粉はすぐにエネルギーに変わる食品です。
運動選手が試合前にうどんを食べるとすぐにエネルギーになり、腹持ちが良いと言われる所以はこの当たりにあると言えます。
アミノ酸の話が出ましたので少し付け加えますと、そば粉に小麦粉をつなぎとして加えて蕎麦を作ると、
長くするためと思われがちですが、その他にも訳があるのです。
確かに切れないように小麦粉の粘性も借りていますが、そば粉100%の生粉打ち蕎麦を見てもお解りのようにそば粉だけでも技術で切れなくすることはできます。
小麦粉を加えるのは、小麦粉に含まれる「制限アミノ酸」と言うアミノ酸を利用して、そば粉の栄養価を無駄に燃焼させてしまうことを押さえ、身体に吸収させるためでもあります。
もちろんこんな事を考えて昔の人はお蕎麦を作ったとは思いませんが、栄養だけを考えると非常に科学的に精査されている気がいたします。生粉打ち蕎麦より二八蕎麦の方が栄養を無駄なく摂取するという観点からは優れているとも言えます。
さて話を戻して、これから来る寒い冬の夜には、風邪の予防を考え、うどんを食べて温かくとお考えの皆様に一言ご注意を申し上げますと、すべてすぐに布団に潜り込みお休みになりますと、牛にはならないまでも太る心配があります。小麦粉も優れた栄養食品ではありますが、澱粉質が極めて多いので中性脂肪ができやすくなると言うことです。